今日は、亀清旅館の客室の庭造りのお話。
少しづつお庭を手直ししているのは昨日お話ししました。 今回は一番狭い離れの客室『末広』のお部屋の坪庭の庭造り。 この部屋の庭はこの旅館の客室で一番狭く、条件も最悪だった。 部屋の窓を開けても、何故か緑に塗られた高さ2mのコンクリートの壁が窓の前を覆い隠す。 おかげで、風も日光も差し込まないからなんだか陰気な雰囲気になっている。 空気が重く立ちこめて植物が育つ訳が無い庭になっていた。 そんな狭い庭には常緑樹の“ネズミモチ”となんだかわからない(多分クレマチスかな?)つる植物が植えられていた。土も乾ききっていて、雑草すら生えない庭。 これがお客様を迎える庭か?と今回も首を傾げたくなる状態。 あまりに酷い。これでは宿泊客も窓を開けたくもない気持ちが良くわかる。 あきらめた方が良いのではと考えた時もありました。 でも「制約の多い小さな庭だけど、やっぱりお客様には庭を楽しんで欲しい」 だから、こんな最悪の坪庭を“リンゴ”をテーマにした庭に変える。 そして、窓を開けて、気持ちよく過ごして頂ける様にすることが今回僕が目指すゴールだった。 第一に直すべきは、この高いコンクリートの壁。 とにかく1/3くらいを残して風と陽が射し込む木製の壁に変えてもらった。 この作業は亀清旅館の若旦那タイラーさんの仕事(なんでも自分でやっちゃう若旦那の鏡)。 夏の終わりには、手作りの木の壁ができていた。 手作りの温かい風合いがなかなかいい。適度に隙間が空いていて、十分とは言えないが風も光も差し込むとても良い壁になった。 ここからはガーデナーの僕の担当。 まずは、植物が元気に育つための土作り。 乾いた泥のような細かい土。砂も多い。 土をスコップで深く掘り起こし、ここに赤玉土、腐葉土をたっぷり混ぜる。 有機肥料の入った培養土も混ぜ土作りは完了。 既存の石を残し、ここに、庭に奥行きと高さ、そして少ない水を溜め込める様に浅間石を乱積みする。風合いのある浅間石が、庭に素敵な表情を造ってくれる。 そして、浅間石は水を良く含むから、しっかりと土壌に水分を溜め込んでくれる。 これで、乾き気味になるこの庭も一安心。 これだけでも随分かわったでしょ? そして表情豊かになったこの坪庭に、植物の緑をプラスする。 まずはこの庭のテーマである“リンゴ(紅玉)”の木を植えた。 大きなリンゴは、この狭い庭ではとても窮屈。 だけど、庭いっぱいに枝を広げるリンゴが見たいし、実を付ける姿が見てみたい。 だから、枝を剪定されていないリンゴの樹を仕入れ、 長く伸びた枝を木の壁に麻ひもで誘引し、エスパリエ仕立てにした。 これなら、狭い坪庭でも大きなリンゴの木を楽しめるし、管理も楽ちんである。 横に倒した枝にはきっと沢山の花が咲くはず。 お願い、咲いてくださいね。 株元には風に揺れるイネ科やカヤツリグサ科のグラスを植えて優しい雰囲気を造る。 窓正面の石積みには、明るい斑入りのセキショウやジャノヒゲ、クリスマスローズなどの常緑の植物を植えた。これを庭のベースにし、その間に季節の野草達を植え、季節毎に何かしらの花が楽しめる様にした。 正面右奥のネズミモチの下は、雨も降り込みにくく乾燥しきっていた。 さすがにこの部分は植物の生育も期待できないので、部屋側に浅間石の小石を敷き詰め、壁側には常緑のキチジョウソウを沢山植えた。 ネズミモチの幹には日本の原種クレマチスである“センニンソウ”が絡めてある。 ネズミモチの枝を剪定したら意外に陽が射し込むようになったから、この位置でもなんとか耐えてくれると思う。がんばれセンニンソウ! こうして、『末広』の坪庭が生まれ変わりました。 悪条件の庭でも、光と風を取り込み、土を改良し、植物が元気に育つベースを造ってやれば、こんなに良い庭にかわります。 あきらめなければどんな庭もアイデア次第で素敵な庭に変わるはず。 とても実感できました。 末広の庭は「あきらめない庭」。 来春、壁いっぱいに咲くリンゴの花が見られるといいなぁ〜。
by eilakuyagarden
| 2009-10-17 01:17
| 里山林の庭
|
Comments(0)
永楽屋garden イベントのご案内 イベント告知など....☆ ********* *年 *月 *日 (※) 、*日 (※) --時~--時
*****
☆ 第*回『花木と語らう緑の園芸教室』
*月 *日 (*) **時 ~ **時
◆テーマ◆「********」 ・**********。 ・**********。 ◎参加費: *****円(花苗、実技資材費、飲み物代込み) ◎場所 追分コロニー/ブックカフェ及び裏庭 お問い合わせ、お申し込みは 追分コロニーさんのホームページへ
|
about 永楽屋garden
山野草、雑木、愛すべき日本の里山風景。そんな自然な庭を愛するあなたへ...
人と自然、植物が触れあえる“ 住まう庭づくり ” 永楽屋garden では... そこにある自然を生かしたナチュラルガーデンのデザイン、施工、メンテナンスを行っています。 「花木と語らう緑の園芸教室」も不定期に開催。 ガーデニングの基本、お庭、植物と触れ合う楽しさをお伝えしています。 長野県, 軽井沢, 八ヶ岳, 岐阜県で主に活動していますが、ご依頼があれば日本全国どこへでも伺います。まずはご相談くださいね。 お庭造りに関するご相談 お問い合せはこちらまで mail: eilakuya_garden@polka.ocn.ne.jp Tel/Fax: 0267-32-0253 Mobile: 090-2346-6877 ※日中は不在にしていることが多いので、mail,Mobileでのお問い合わせが確実です。 カテゴリ
全体永楽屋ガーデン 息抜き 里山林の庭 岐阜の庭 庭造りいろいろ 木の物語 野草の暮らし 失われゆく植物たち インドアグリーン 浅間山 散歩道 追分宿の庭 園芸教室 大山桜を守る会 イベント メディアなど スタッフ募集 風景 雑木の庭 未分類 以前の記事
2024年 02月2024年 01月 2023年 06月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 01月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 05月 more... タグ
雑木林の庭(50)
岐阜(49) 軽井沢(48) 春(27) 野草(22) 冬(14) 春の野草(13) 里の木々(9) イベント(9) 散歩(9) 記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
| ||||||
ファン申請 |
||